大いなる「ハチ猿無視作戦」

シッコをシッコシートにする時もある。

 

その時は躾の本に書いてあるように、ものすごくほめてあげる。

高い 高いをしてあげる。

おやつをあげる。

その行為をすれば御褒美がもらえると覚えさせる。

 

椅子の足にシッコをかける。

その時は椅子の足に「シッコシート」をあらかじめガムテープで巻いておく。

靴におシッコをかける。

その時はあらかじめ靴にシッコシートをかけてあらかじめガムテープで巻いておく。

えっこんなわけないじゃないか! これは間違っている!!!

 

これでは家じゅうがガムテープでまかれたシッコシートだらけになってしまうではないか!これは間違っている。

 

作戦の見直しだ!

アグレッシブな「北風作戦」にしてやるぞ!

 

しつけ情報をゲットした。

 

「悪い事をした場合は皆で無視する」そうすれば「無視される」事が不安になって躾ができる。

 

うん!これだね! 僕は家族にこの大いなる作戦発表し家族全員の協力を求めた。

 

「ハチ猿無視作戦」どんなに可愛くハチがすり寄ってきても目を合わせてはいけない。

目を合わせると調子に乗って今のままでいいと思ってしまう。

ハチの為を思って無視する事。

ハチ猿を「賢いワンちゃん」に育てようではないか! オウ!

奥さんと娘二人は軽くうなずいて賛同した。

 

パパがそんな事出来るの?

そんな意見もあった。

 

ハチがくる。 

カチカチ カチカチ 小さなツメの音がフローリングに響く。

ハチは耳を垂れて上を見上げる「抱っこして」。

無視・・・・・

 

美波 こうやって無視するんだよ。

わかった?

 

ソファーでTVを見ている。

ハチが来る。

ソファーに飛び乗って僕の膝に頭を載せる。顔をすりつけて僕を見上げる。

我慢だ 無視・・・・・

 

美帆 こうやって無視するんだよ。

分かった?

 

ベッドで本を読んでいる。

ハチが来る。ベッドに飛び乗って僕に脇に滑り込み嬉しそうに「ク―ン」「ク―ン」と顔をすりつけて僕を潤んだ瞳で見上げる・・・・

 

ウツ! もう駄目だ!

 

「ハッ ハチ!  無視してごめんよ!  変な本に書いてあったんだ 躾の本にさ  ハチ!もう無視なんてしないよ!」   

ハチをぎゅっと抱きしめる。

 

家族の冷笑の中、僕の大作戦は1時間で終焉を迎えた。

 

そのころハチは僕のベッドの下を棲みかとしていた。

 

ハチはベッドの下でクスクス笑っていた気がする。