ステルスシッコ攻撃

キャ〜キャ〜

キャ〜キャ〜

と犬友のママさん達が叫んで飛び跳ねる。

 

えつ ハチ

 

井戸端会議真最中の犬友ママさん達の足目がけあいつはステルスシッコ攻撃を始めた。

あのステルス戦闘機のように防護色の毛並みで気配を消して、視線のレーダーにかからないように密かに足元に忍び込みシッコをかけて立ち去るのだ。

犬友のママさん全員を、俺様の子分にしてやろうとでも思っているのか?

 

ドッグランの砂浜と同化したようなサンドベージュの毛色でチョコチョコと犬友ママさんの背後から無差別ステルスシッコ攻撃を敢行したのだ。

 

キャ〜キャ〜と飛び跳ねてハチがやったと騒ぐ犬友のママさん達。

僕は被シッコ者全員にごめんなさいを連呼して頭を下げてハチを追いかける。

 

ハチといえば

「なんだよパパ、あいつら子分の証の俺様の臭いをつけてやったんだよ。

なぜ怒るの?」

 

そんな表情で僕を見上げてる。

 

僕はその不思議な表情が面白くて微笑ってしまう。

 

誰かのママさんが言った.

 

「犬は飼い主に似るっていうからね、はっちゃん(僕は犬友仲間にはっちゃんと呼ばれていた)もそんな事をしてんじゃないの?」

 

そう言えば、そんな事をやったような気がするではないか

 

「えつ どうしてわかるの?」

「性格がそっくりだから」

 

そう言えば、最近わが家のメンバーからも

ハチは最近パパに似てきたとか、やることがハチそっくりとか言われ出した。

 

うーん、これはどういうことだろう。僕とハチは血のつながりは無い。

しかし、何時の間にか犬友にははっちゃんと呼ばれて僕は自然に返事をしている。

 

僕とハチはイメージの同期化現象を起こしているのではないか!?

 

犬友の平岡さんは僕の事を「ハチ」と呼ぶから犬のハチか僕かわからない事がある。

 

おつ 今度は男の声がした。

犬友パパにハチがステルスシッコを成功させた。

このままでは犬友全員がハチの子分になってしまう。

 

翌週の日曜日

 

いつものように犬友パパママが愛犬を連れてドッグランに集まって来る.

それぞれの愛犬にお互いおやつをあげる。

 

「ハチ今日はシッコかけちゃヤーよ。」

「そんな事はもうしないよ。」

「あれから良く言い聞かせたからね、」

「本当⁈」

 

お カステラとモモが取っ組み合いを始めたぞ。

お サスケが海に入りそうだ。あいつは海大好きだからな

おアリスが新参犬を脅かしてる。

ハチもやられたな、今もやられているけど。

 

いつもの犬友仲間の平和な風景なのだ。

 

その平和なひと時を破る叫び

「キャ〜また ハチがオシッコかけた。」

 

「はっちゃんハチがね!またね!足にね!シッコをね!」

 

「ごめんなさい。悪気はないんだけど。」

「それはねラッキーシッコといってね、スコットランドでは有名でね・・・」

と、とんでもない言い訳。

 

「もうまったく!」

笑って許してくれるからありがたい。

 

このままではハチがステルスシッコ攻撃をしているのか

僕がステルスシッコ攻撃をしているのか分からなくなってしまうではないか。

 

えっ!足首が暖かい。

こら ハチっ!

御主人様にシッコかけてどうすんだ!

ハチッ!

 

だっ 脱兎の如くいや、ウリ坊の如くハチは逃げて行く。

 

舌を出したような気がした。