Vol.13 初対面の挨拶はシッコ

ハチは海の公園が大好きである。

 

海の公園は犬好きが自然にたくさん集まる場所である。

いつの間にか沢山の犬友が出来てしまう。

 

ある日の初対面の犬友との会話である。

海の公園に続く道の一本前の交差点で初めてのワン子に出会った。

 

「こんにちは」

「こんにちは」

「男の子ですか?女の子ですか?」

「犬種はなんですか?」

「何歳ですか?」

「人見知りするワン子で・・・・」

「犬よりも人間が好きで・・・」

「ウチのはスカイテリアで….家の家具をかじって大変なんです・・・・」

なんて会話の内容は殆ど決まっているものだ。

「それではどうも」と会話が終わる瞬間。

 

「アッ」

とその初対面の犬友ママさんが飛び跳ねた。

 

「エッ」

と下を見るとハチがステルスシッコ攻撃を既に終了して

 

「パパ早く行こうよ」

と横断歩道をわたる催促をしているではないか!

 

赤面しつつ「すみません」と頭を下げる僕。

 

頭を下げたときにハチが「パパ早く行こうよ」「そんなワン子興味ないよ」そんな目で僕をみている。

 

「大丈夫ですよ。気にしないでください」と言ってくれた。

 

もし自分がほかの犬に初めて挨拶していきなりステルスシッコ攻撃をされたら?

 

そう思うともう初対面の方にお話しするときはハチを抱くかリードを短くして動かないようにするしかない。

 

そんな事をぶつぶつ良いながら散歩を続けた。

そもそもなぜこいつは人にシッコをかけるのだろう?

 

ステルスシッコ攻撃する癖がケア―ンテリアにはあるので気をつけなければいけない、なんてどの本にも書いてなかったし、僕が知っているわんこの常識をこえた行為だなんだとまだブツブツ言っている。

 

ハチは海の公園を歩くとご機嫌になるからピョンピョンスキップしながら歩いているようだった。

 

ひとにシッコをかけないようにする躾教室はあるのかな?

ないよな。普通は他人や飼い主にステルスシッコ攻撃はしないし。

 

初夏の鮮やかな夕陽が八景島を背景に静かに沈んでいくのが見えた。

 

ハチ、お家に帰ろう。今日も楽しかったかい?

 

はちのしっぽが軽快に揺れた。