振ってはいけない炭酸飲料を    

             振らなければ飲めない炭酸飲料にした!

 

              フルフルシェイカーはどこに消えてしまったんだ?!

 

2008年にその奇跡は起こりました。

ヒットの目安が年間70億円と言われる業界で半年165億円を売上げたのがこの炭酸飲料

ファンタフルフルシェイカーです。

ファンの方も多かったのではないかと思います。

「振ってはいけない炭酸飲料」を「振らなければ飲めない炭酸飲料」に変えたファンタフルフルシェイカーはINNOVATIONのお手本だと思います。

 

ファンタの歴史は長く誕生は1958年です。

僕の年齢とほぼ一緒ですから親密感もあります。親戚がお盆に集まって大人はビールを飲んで(キリンの大びん)子供達は別の部屋で、オレンジは小さい子供達用で少し大きな子供達はグレープを飲んでいた記憶が思い浮かびます。

約半世紀にかけてこのブランドは愛され生き続けているブランドです。最近は少し影が薄くなったのは淋しいですが。

ブランドの価値要素(VALUE ELEMNT)と言う視点から、この大ヒットを分析したいと思います。

大きくこのブランドの商品開発の歴史を分析すると3つに分けられます。

守り続けてきた事は「FANTASTIC(なにか愉快で楽しい飲み物)ブランドイメージです。

VALUE ELEMENT=「守る」「変えない」

高度成長時代 成長時代 (19581979

この時代は「多品種差別化」です。

オレンジ グレープ アップル レモン フルーツパンチ パインフルーツ メロン ストロベリー アップルミント パインアップル ピーチ

VALUE ELEMENT=「広げる」「加える」

バブル期 1980年から199

この時代も同じく「多品種差別化」と新たに「面白CM」が加わります。つまり拡大化はするのだけどコンペチターも同じ行動をとるので、ブランドの発信を強くしてIMPRESSIONを強くするマーケティングが必要とされた時代です。

クリア―パイン アンズ スカッシュパンチ マスカット グレープフルーツ 青りんご

トロピカルパンチ  (ユニークな名前が増えて来ます。)

VALUE  ELEMENT=「広げる」「加える」「足す」

バブル崩壊期 1990-1999

ここで時代のニーズが変化してきます。

厳しい時代に突入したからでしょうか?

「飲む」行為で「体が強くなる」ビタミンサプライが支持されました。

ビタミンC ビタミンB12 アミノ酸

VALUE  ELEMENT=「広げる」「加える」「足す」

価値変革期 2000-2010

「失われた10年」とも言われますが、何も失われた訳ではなく社会の価値が大きく変化しただけの事です。その変化に社会も企業も人の心もついて行けなかった時代です。既存の場所で既存の価値を生み出すシステムが崩壊しはじめ、新たな場所で新たな価値が生まれている変化について行けなったのではないかと思います。

この変革期は「飲む」行為に「体を守る」という価値が付きました。

合成着色料不使用 純水使用

VALUE  ELEMENT=「加える」「足す」

 

こうやって振り返ると昭和から平成に向かって商品開発が徐々に難しくなっていった事が

解ります。3つの価値基準のステージが見えて来ます。

最初のステージは19581989

多品種開発で「ユニーク」な商品でリード出来ていた市場にコンペチターで溢れかえり、差別化を鮮明にするために「面白CM」で一層の差別化を計りました。

2番目のステージは「バブル崩壊期」です。

ここで社会全体が行き詰まり、従来の社会経済システムでは価値が生み出せなくなってしまったのです。 この時代はまだ「必ず右上がり経済に戻れる」という願望があり「体を強化する」というような市場の空気感があったと思います。そして「飲む」行為が「喉を潤す」行為だけでなく「体を健康にする」事を兼ね備えたサプリメント化が計られました。

そして3番目のステージ「価値変革期」です。

ここで「元の良い時代」には戻れない事が解った。すると今度は「体を守る」という防御的なVALUE ELEMENTが求められたのです。

ファンタの歴史は時代の価値が大きく反映されています。多くのブランドに当てはまるのではないでしょうか?

 

そして2008年 ファンタ50周年を記念した商品開発が行われたのです。

いままでは時代の流れを読み取って商品企画を進めるMARKET INの発想で企画が行われましたが、今回は「50周年」というファンタだけの「都合」によってPRODUCT OUT志向の商品企画が行われたのです。ファンタだけの「都合」と言うのは、他社がやる動機が全くなくファンタだけのコンセプチュアルな思想で開発できたと云う事です。市場分析思考はMARKET IN ですが、ブランドのコンセプト思考はPRODUCT OUT です。つまり価値軸がファンタだけの価値軸で企画開発が可能となった訳です。MARKET IN 思考は価値軸をMARKETに合わせようとしますから各社が同じコンセプトに似通ってしまいます。

 

この開発の最大の魅力は「振ってはいけない炭酸飲料」を「振らなければいけない炭酸飲料」に変えたことです。これは「タイヤが回って走る車」を「タイヤが回らないで走る車」にしたような発想の大ジャンプが実践されたと思います。その商品ににとって「タブー」や「常識的に在るもの」を「否定」したところが物凄い発想だと感じます。

VALUE  ELEMENT=「逆にする」「壊す」「裏返す」

このELEMENTが最も強烈な発想のジャンプです。

そのブランドが持つ「常識や固定観念」を打ち消して「タブー」を認めたところが「逆にした」ところです。

 

そして対照的なエレメント

VALUE  ELEMENT=「守る」

守り続けてきた事は「FANTASTIC(なにか愉快で楽しい飲み物)ブランドイメージです。

この二つのエレメントを繋ぐ重要なエレメントがあります

 

VALUE  ELEMENT=「進化」「掘る」

発想を実現する為には「技術」が無ければ進めません。この場合は「炭酸をゼリーの中に封じる」という技術がなければ完成されなかった。一般的に技術者は新しいアイデアを中々受け入れようとはしません。しかしこの場合は技術者がその意向を理解して製品化に成功しました。

 

こ3つのエレメントの組み合わせが、大ヒット商品を生みました。

エレメントの組み合わせが非常に重要なのです。

 

そしてこの商品は新たな付加価値を生み出したのです。

    ゼリー状にした

⇒小腹がすいたとき⇒飲料から軽食化

    振るという行為

⇒シェイクすることが面白味やストレス発散

    タブーを破る行為

⇒だめだと云われた事を破る快感

これは最初から狙ったものではなく結果として生まれたものです。

この企画はチロルチョコの開発エンジンと同じ「ノリの良さ」で出来たのではと思います。

 

さらに面白いと思うのは完成品の可能性を確かめるアンケートで女子高校生を使用したと云う事です。人口の中で最も「ノリがいい」彼女たちを活用したという点がとても理にかなっていて面白いです。

(女子高生反応基準)

LEVEL 1     E

LEVEL 2     USO !!

LEVEL 3     KAWAII  !!!

LEVEL 4     YABAI    !!!!

彼女たちの反応はLEVEL 4YABAI!!!!でした。

 

当時、僕はこのファンタの未来を「仲間」をポイントに拡大して予測していました。

CONCEPT

「何か愉快で楽しい飲み物⇒楽しさを仲間に届ける飲み物」

    FANTAと吉本のコラボ (楽しい繋がり)

    CAFÉ DE FANTA  (そこに行けばあらゆるファンタフルフルシェイカーが飲める)

    H&MTSHIRTS コラボ(ファッション化を計る)

    HARAJYUKU 文化の支援 (中心となる顧客の同期化)

    UNICEF支援(子供達を守る)

残念ながらどれも外れてしまいこの商品は販売終了になってしまいました。

 

次のワクワクする飲み物はいったい何でしょうか?

新しいワクワクINNOVATIONが楽しみです。

 

*ちなみに「仮面ライダーサイダー」(ダイドードリンコ)はいけてると思います(笑)

 

 

「サイダぁ~変身!」