ルイヴィトンのデザインソース

 

この誰もが知っているモノグラムデザインソースは「日本」の家紋であることをご存じだろうか?よく見るとわかるのだがどこか日本風な雰囲気を醸し出していることを気づかなかっただろうか?

嵐山の古いお寺にLVのデザイナーが「寺紋」を使いたいと訪ねてきたそうだ。その住職は断わった。

 

ルイヴィトンがLVMH JAPON で直接販売する前は、ある大きな日本のインポーター(輸入業者)が取り扱っていたことがある。そこの社長が後のLVMH社長の秦氏に言ったそうだ。

 

「あの柄は風呂敷みたいで信玄袋のようだ。売れるわけがない」と言ったそうだ。社長はいくつものブランドを輸入販売しているからそれなりの感覚を持っていたはずだ。がしかしだ。「売れるわけがない」という予測が全く大外れして企業をつぶすような判断をしているのだ。

変化する市場を嗅ぎわける感性が無かったとしか言いようがない。

あまりにも既存の価値感覚にとらわれすぎていたのではないか。

 

経営者は「高感性ファッション」を持たなければいけない。

 

LVMHのアルノ―氏はブランドのデザイナーに日本の原宿に行けば必ずアイデアが湧くので行くように指示している。日本からのインスピレーションを加工して新しい価値をクリエイトするのが上手いのである。つまりファッションソースを日本の伝統文化から取り入れてそれを自分のブランドのフィルターにかけて商品化している。

 

 

LVMHをはじめ多くのラグジュアリーブランドのデザイナーや企画担当の連中が京都を訪れているのだ。GIVENCHYの企画チームは僕の知り合いの「金箔師」のアトリエに毎月来ていた。京都の金箔の美しさをどうやってファッションや化粧品に取り入れるか研究し口紅で実現した。

 

 隣の帯の機織り工房にはVALENTINOのデザイナーが訪れて京都の昔からの柄を掘り起こしている。嵐山の友人の「染師」の工房はHERMESの現社長と企画担当者が訪れて手染めを研究して商品を買って帰国した。その後はルーブル美術館の学芸員が定期的に訪れている。

 

何かと似てないだろうか?

APPLEだ。APPLEは独自の技術は殆どないが、既存の技術を集めて魅力的な商品をクリエイションしてきた。日本の伝統工芸の技術は素晴らしいがそれがそのまま現状のマーケットに受け入れられるかというとそれはNGだ。新しいフィルターを掛けなければいけないのだ。ところがこのフィルターを中々掛けることができない。下手にやると「お土産物産展」になりがちなのだ。このフィルターはでは何だろう?

 

それは「高感性ファッション」だと僕は感じている。

APPLEのフィルターも実はライフスタイルの中にある「ファッション」なのだ。

 

この「高感性ファッション」の感覚は経営者に求められる。

それは時代を嗅ぎわける力でもあるのだ。