ボージョレヌーボーの罠 part-3

「ボージョレーヌーボーの罠」

〜解禁日には必ず言いたくなる!〜

3回目だ!



ボージョレーとは地名である。州に当たるそうなので日本でいえば「県」の地名である。ヌーボーは「新酒」の事である。その年に収穫されたブドウを寝かさずにその年に飲むワインの事である。

今年も同じ事を言いたくなる解禁日であり、日本でも大きなイベントとなってしまったのがボージョレーヌーボーなのである。

本来ワインは寝かせてナンボという価値感を持っている。最近でいえば20052009年が当たり年だというように。

ところが、「寝かせて飲む価値感」を「寝かせないで飲む価値感」に変えてしまったのが「ボージョレーヌーボー」という舌を噛みそうな言葉のイメージ力なのである。

日本人はフランス語の響きに弱いのだ。ラグジュアリーブランドの言葉の響きも同じように、憧れのイメージとしてを無意識のうちに洗脳されているのだ。

しかもこのフランス人の戦略は「毎年とれるブドウを寝かせて必ずしも美味しいワインが出来るわけではない。それならば、寝かせない薄いワインを「ネーミング」を付けて「寝かさない」を「フレッシュ」という価値感に変えてイベントとして販売しよう。そうすれば不作の年でも「フレッシュ」なワインとして販売出来るではないか!

 

そうしてこれを「ボージョレーヌーボー」と命名しよう。

 

というのがフランス人が考えた「価値の枠組み」なのである。

そしてこの罠にまんまと乗ってしまったのが、僕をはじめとする多くの日本人なのである。いや本当にうまい罠だと思う。

 

ファッション的な要素も兼ね備えており「ボージョレーヌーボー」を毎年楽しみに飲んでいるとかいうとお洒落に感じてしまうのだ。ファションブランドとのコラボも当たり前だ。

女子会でも「ボージョレーヌーボー」は人気だ。

恐るべき「イメージ枠組みの罠」なのだ。

 

この価値転換の思考技術を日本人は苦手なのだ。

 

では日本酒新酒を調べてみた。

「日本酒の世界では、冬に醸造した後6月までに出荷されるものを、新酒と呼びます。もう少し長く、夏を越えて秋まで熟成させ、ここで火入れをせずに出荷されるものが、「ひやおろし」。

 日本酒業界では、2008年から、「ひやおろし解禁日」を99日に決めたとのこと。」

知っていましたか?9月9日が「ひやおろし解禁日」だって事を?

 

会話にもなっていない。「ひやおろし飲もうよ」なんていう会話は聴いたことがないし言ったこともない。

ことしも「ひやおろし」の時期だね なんて言わない。

 

「ボージョレーヌーボー」と「ひやおろし」の魅力の差は何だろうか?ボージョレーは形から入っている、「ネーミング」「ボトルのデザイン」すでにファッショナブル生活志向の人のリーズナブルなワインというイメージを市場に植え付けることに成功している。ボージョレーヌーボー女子会はあるが、ひやおろし女子会はない。つまり「ひやおろし」にはイメージのグランドデザインが無いのだ。

 

「味」の事を言っているのではない。僕も日本酒は好きだ。ワインとは違った美味しさがある。生産している方は「味」がいい点での自信と誇りはボージョレーの生産している方となんら変わらないしそれどころかワイン以上の技術があると思う。

 

最大の違いは「それを飲むとどうなるのかというイメージ」が消費者に届いていないのである。ボージョレーは「ファッショナブルな生活志向」の人のライフスタイルをイメージする事が出来る。「ひやおろし」といネーミングからはライフスタイルをイメージする事が出来ないのである。

 

京都のお線香の松栄堂さんは、「線香くさい」というネガティブなイメージがある線香をリスンというカタカナに変えてイメージを払拭して新たな香り事業を開発した。

リスン(Listen)とは「香りを聴く文化」を英語化したものだ。

1600年の歴史がある言葉を捨て、アパレルのマンスリーMDを取り入れて季節感とTPOとカスタマイズ化に成功している。

 

日本酒業界も松栄堂さんのように思い切ったINNOVATIONと進化が必要ではないだろうかとこの季節はいつも思ってしまう。