「小ざさ」の 年商3億円 究極のブランディング

 

小ざさ (吉祥寺)

https://www.ozasa.co.jp

売り場面積:3坪

 

年間売り上げ:3億円 

-売り上げ構成:羊羹 3000万円  最中 2億7000万円

 

商品構成:2SKU    羊羹(675円) 最中(約70円)

 

羊羹生産販売量:1日 150本

 

最中生産販売量:1日 13000個程度

 

販路:直営店 1         FAX   TEL   WEB

 

 

 

 

STEVE JOBSも驚くだろう「2種類」の商品で年間3億円も販売しているという、なんとも信じられない数字なのだが真実の数字だ。写真のようになんとも飾り気のない質素な佇まいのお店が1店舗だけの直営店である。

 

商品構成は「羊羹」と「最中」の高度な極端に異なる2重構成になっている。

「価値の根源」を教えてくれる。

 

羊羹はこだわりの羊羹で「物作りの感動STORY」(小豆が紫色に輝く瞬間の見極め)が歴史と共にこの商品に集約されている。本物の職人技は「量」を嫌う。本物で有るためには職人が感じ取る事ができる3回転の釜で「日産150本」が限界なのだ。(AIは将来こんな職人の技をも持ち合わせる事ができるのだろうか?)そして小ざさはそれをしっかりと守っている。価格も675円と低価格な究極の羊羹なのだ。ラグジュアリーブランドがファストファッション価格で販売されているような感覚だ。そこに「都市伝説」が生まれ「魅力価値」が自然と生まれた。SNSがない時代では「口コミ」や「雑誌紹介」なので好イメージのブランディングが進んだのだろう。羊羹は早朝並ばなければ買えない、行列を作る人々が勝手に「小ざさクラブ」なるものを作ったとか。ファンクラブが自然発生するのは商品に対する愛情が「作り手」と「買い手」で「同期化」しなければ生まれない。現在でもその「同期化」をSNSを意図的に狙っても実現は難しい。

「買手」から「商売っ気」を見破られてしまう。小ざさが同期化出来たのは「哲学」が明確だからだ。それは「お客様を裏切らない美味しい羊羹を作ること」。この哲学が明確だから「商品」「サービス」「イメージ」がぶれない。一方で「拡大化」をこの哲学は容認しない。ビジネスとしての「質」の拡大は認めても「量」の拡大は認めない。

 

ここに経済界が忘れている「魅力価値」が有ると思う。そこを深掘りすると「株主」ではなくCUSTOMER FIRSTが見えて「グローバルスタンダード」が崩れていく。成熟社会はこの「量」の拡大を求めない思考が正しいと思う」。ブータンの価値感「幸福度」もここに有るのではないだろうか?

 

そして最中だ。単価が70円程度で年間2億7000万円の売り上げ(約400万個)がある最中って! なんだろう!

 

しかも販路は小さな店舗と通販だけ! この最中は羊羹と違う意味で興味深い。最初は羊羹を買えなかった人が、最中に移っていったのだろうがここにも合理的な理由があるそれは小豆と砂糖という原料が共通しているのだ。同じ原料なので「技術」が生かされている事がイメージできる。しかも最中は「量産」が可能な仕組みを作り「釜」を増やして稼働させている。つまり数量が限定されて中々手に入らない手作りのラグジュアリーブランドと同じ「パターン(型紙)」の商品が、年間400万個も「量産」されて販売されているという事だ。なんて高度に考えられた構成なのだろうと思うが、「哲学」に基づいて行動すると羊羹は「限定」されて手に入らない人も多いが最中はその製法から「質」も「量」も拡大化可能だったのだろうう。

 

しかしこの2品番で3億円とは!

秘密は「GIFT需要」だと思われる。美味しい「食べ物」が価値あるがある貴重な「贈答品」という魅力価値を兼ね備えたのだ。

「贈って嬉しい」「頂いて嬉しい」 「食べて美味しい」 このトライアングルが出来たのだろう。

 

そして「販路」。

写真の小さな直営店と通販だけであるから「販売員人権費」が殆ど入らない。デパ地下に出店するとマージンを百貨店に取られて人権費も発生するが、小ざさはそれをやらない。今は多くのメーカーがB2B2C からB2Cに移行しようとしている。小ざさはそれがすでに完成している。もっとも生産拠点「工場」が近辺にあり、そこから「出荷」も多なっているそうだ。それは「在庫」が殆どなく常に「原料」「商品」「お金」が回転している状態を示す。そんな企業は中々見受けない。

 

こう見てくるとビジネスで最も大切なことはなんだろう。

まずはなぜこのビジネスなのかという「哲学」だ。

そして「経営資源」の中に「限定技術」が生まれ育ち、そこで商品の「中身の価値」が生まれる。

食べ物は「美味しい」「又食べたい」という価値が全てだ。