リュウちゃん ありがとう 大好きだったよ

昨日、僕のペットのリュウちゃんが死んだ。

享年11歳 人間で言えば70歳くらいだろうか。人の言葉や感情が解るワンコで家族をいつも癒してくれた11年間だった。

僕は彼を枕にしてリビングのソファーでテレビを見ていた。呼吸がゆっくりで毛並みが柔らかでそれはまるで、トトロに出てくる「猫バス」は多分こんな感じなんだろうななんて思っていた。枕にされても何も不平も言わずに寝ているのがリュウちゃんだった。彼の犬種は「プチバセットグリフォンバンデーン」(フランス語でやけに長い名前である)。日本では珍しい犬種で散歩していても殆どの人が知らない犬種である。この犬種は通常「プチバセ」と呼ばれていてコレでも、優れた猟犬なのである。フランスのグリフォーン地方で生まれたプチバセのリュウちゃんは水泳の名手だった。海の公園の海岸でボールを海に投げると海に飛び込んで、尻尾をふりふりさせながらボールを加えて戻ってくる。

芝生のグランドでもボール遊びが大好きで「早く投げて」「早く投げて」とアザラシみたいな甲高い声で催促するのだ。その仕草が可愛くて可愛くて。しかも中々ばてないのだ。毛に埋もれた目でいったいどうやってボールを追いかけるのだろうといつも不思議だった。そんなリュウちゃんが死んでしまったのだ。リュウちゃんは幼少の頃、日本で前例が1件しか無い「ペインシンドローム」という大病に冒されて生死をさまよった事がある。これは自分の免疫が自分を攻撃して体中がいたくなる難病だったのだ。藤沢日大病院でMRI検査入院でリュウちゃんを病院に預けて別れるときに、リュウちゃんは悲しそうな声で「ヲーヲーン」「ヲーヲーン」とアザラシの声で大泣きした事を思い出す。甘えん坊のいい子なのだ。そのリュウちゃんが死んでしまった。

その日は朝の散歩もいつもと変わらない様子だった。お昼にリンゴを食べていたら食いしん坊のリュウちゃんは「頂戴」と膝に乗ってたのでリュウちゃんとリンゴを一緒に食べた。そしていつものようにリュウちゃんは夕方の散歩迄お昼寝するのが日課なのだ。TVで映画を見ていると夕方の6時くらいだった。急にリュウちゃんが起きだしソファーを飛び降りてトコトコと歩き出した。「ちょっと待ててね」というといつものように言ってもトコトコと歩き回って、朝の食事のウンチを床の上にしてしまった。悪いウンチではないので我慢出来なかかったのかと思い、片付けて臭い消しで綺麗にして、リュウちゃんを呼んだが来ない。おかしいなと思いベランダを見てもいないのだ。リュウちゃんは玄関の冷たい石の上に伏せの状態でいた。変だ!オシッコがしたいのだろうと、慌ててリードと首輪を付けて玄関を出ようとしたが、動かない。いや、動けなくなっているのだ。いったいどうしたというんだろう、僕はリュウちゃんを抱え上げて(重いのだ20キロ近くある)リュウちゃんの定位置のソファーまで運び寝せた。ふらふらで立てなくなっている。舌を少し出して息づかいが小さいのに荒い。横になったリュウちゃんの背中を何度も何度もさすってさすって「どうしたの?」と聞いてみた。リュウちゃんの目の視線が定まっていない。舌は真下ではなくやや右下に鮮やかなピンクではなく収穫が終わった桃のような色でだらし無く出ている。もはや緊急異常事態だ。この夏の初めに実は、もう駄目かなと思う時期があった。毛が抜けて食欲も無くシッポはハムスターのようになってしまったのだ。医者に相談してセルドイドを飲ませても少しも改善しなかった。しかしWEBで「鹿の肉が良い」という情報を発見して早速「鹿肉ドッグフード」に切り替えたところ、めきめきと効果が現れて毛が生えて活動的になり何とか今年の暑い夏を乗り越えたのだ。この経験からリュウちゃんにもしもの事がある可能性がいつでもあるという認識が生まれていた。僕にはそれが解った。それがこの時だったのだ。横たわるリュウちゃんはだんだん動かなくなり、呼吸も小さくなって行く気がした。僕はリュウちゃんの顔を抱きしめた。何回もキスをした。リュウちゃん リュウちゃんと涙をこらえて呼び続けた。チャイムが鳴った。無視だ。それどころではない。また鳴った。無視だ。それどころではないのだ。そしてリュウちゃんが動かなくなった。心臓の鼓動が小さくなって解らなくなった。呼吸が3回ゆっくりと僕の腕の中に伝わった。3回目の呼吸が最後の呼吸だった。リュウちゃんが死んだ。穏やかで優しい死をリュウちゃんは僕に見せてくれた。

しかしリュウちゃんが死んだ。もう会えないのだ。悲しい。