Orobiancoの挑戦」

「利」より「魂」の哲学

 

日本に代理店を立てずに、直接取引で100社以上と取引に成功しているブランドがある。イタリアのバッグブランドOrobiancoだ。殆どの海外ブランドは、日本へ上陸する際は代理店を立てチャネルを確保した上で市場の拡大を計るがオロビアンコはそれをしなかった。代理店のメリットはチャネルの確保が出来る事だが、一方で利幅が低くなり商品は主な店舗にあるから店舗間の「差別化」がなくなる。

オロビアンコは2種類の価値軸をずらした。1つ目は直接取引をして利幅を確保したこと。2つ目はなんと店舗別に「カスタマイズ」可能な仕組みを作った事なのだ。国内のブランドでも中々出来ない、それは生産システムがカスタマイズ用に出来ていないからだ。そのブラックボックスをこの企業は毎年、利益の半分をハイテク機器に投資し、毎シーズン300型をロスなく作れる機能を持つ事に成功したのだ。通常の戦略を100%否定して、代理店を持たず店舗別にカスタマイズを前提としたビジネスモデルを選んだ。このオロビアンコビジネスのビジネスの哲学はなんだろう。それは100% Made in Italyへの誇りであり執着心でありイタリアの職人魂の技術を守る事だと思う。現在、イタリアの法律は商品の30%をイタリアで製造していればMade in Italyだと認められている。例えば70%を他国で生産して残りをイタリアで生産すればMade in Italyとして販売できるのだ。それは人件費が安い海外へ技術が流失している事であり、Made in Italyへの誇りが薄れ、イタリア品質不信感のリスクの始まりに他ならない。そこに歯止めをかけるべく、100% Made in Italyの生産にこだわった。ここがこのブランドの生き方であり「哲学」だ。「哲学」が明確であれば投資も経営資源の「技術」に集中され、カスタマイズ可能な「機能」が生まれる。「デザイン」は機能のカスタマイズを生かし「コミュニケーション」としての営業が直接取引でブランドの「哲学」とその「魅力価値」を伝える。哲学を中心に価値軸をずらしたブランディングがしっかりと出来ている。

カスタマイズを可能にした技術は「魅力価値」として世界の市場で通用するものだ。他のブランドが中々真似する事ができないのは、この「哲学」をイタリア職人の「魂」がつくりあげているからだ。「利」よりも「魂」が礎となるブランドビジネスは強い。