イメージのパワー

 

 

レオタード   線香    インセンス     西洋舞踊下着

何の関係かわかりますか?

どんな関係かイメージして下さい。

 

お線香がインセンスになったStoryです。お線香の市場は極々限られたものになっていて仏閣やお墓参りなど仏教的な需要しか残っていない厳しい状況でした。

 

松栄堂の畑 さんがサントロペテルグルを訪れた時に、可愛いらしいバレエの練習をする女の子達を見ていました。レオタードを着た可憐な小さなバレリーナは強い印象で脳裏にやきついた事でしょう。

 

数年が過ぎて近くの商店街にある洋品店でこんな手書きの宣伝を見つけました。洋風舞踏下着入荷しました。えつ  洋風舞踏下着って何だ? 店内で見てみるとそれはレオタードの事だったのです。

 

その時です。閃いたのが レオタードという言葉の響きは 素敵なバレエのイメージを浮かばせるが 西洋風舞踏下着では何のことかわからない、それを線香に置き換えると 線香は

線香くさいとかお墓参りとか素敵なイメージは湧いてこない。そうだネーミングを変えてみよう。そして英語の言葉で近いものを探したのが インセンスだったのです。

 

サントロペテルグルの印象媒体となり数年後に地元京都で閃いたのです。

アイデアは距離に比例するという言葉を思い出します。

 

インセンス  分解するとinsideとは内面的なものとsence  つまり感覚です。内面的な感覚がインセンスです。その感覚にいいイメージを与える事ができるものそれが香りなのです。

 

Insence という言葉はイメージを涌かせる事ができます。毎日の感覚に合った香りの創造です。つまり四季の移り変わりと日々の自分の感覚は無限にあります。

優つな雨の日に人はどんな香りを求めるのだろう。真夏の暑苦しい夜に爽やかな香りはどうだろう。十五夜の夜に月にふさわしい香りは何だろう? 雪の降る日はどんな香りが心地よいだろう? 蒼い山並みに咲き誇る山桜はどんな香りなんだろう?イメージは無限に広がって行きます。

 

自分だけの香りがある素敵な生活の提案が出来ました。

 

先が見えない現代のライフスタイルに心を癒したり楽しくしたりする香りは欠かせなくなっています。平安時代は貴族だけの嗜みだった香りが誰でも手軽に楽しめるインセンスとして復活したのです。

 

この企画は女性が中心となっています。企画はまるでアパレルの手法と一緒なのです。

シーズン別月別にテーマを決めて香りと色で落とし込んで行きます。しかも香りと音のコラボやアートや光やファッションとのコラボまで発展しているのです。

 

これがイメージのパワーです。お線香で行き詰まっていた発想がインセンスという新しいネーミングに変えたことでイメージの泉が溢れ出ているのです。

 

村上春樹さんの新しい長いネーミングの本が出ます。

彼は言っています。タイトルがイメージを膨らませて小説の中身を作って行く、だから最初からストリーが決まっているわけではない。イメージが小説の中身を自分に書かせているのだと。僕はここにプロダクトアウトの奥深さを感じます。

 

例えばエルメスもマーケットインの発想はありません。

テーマを深く深く煮詰めてクリエーションを行うプロダクトアウト思考なのです。

エルメスと村上春樹は似ている のです。

 

イメージのパワーはクリエーションの原点です。

 

勝新太郎さんが若い俳優に 台本はひらがなで読めと言った話がありますがこれはどういうことかと言えば、漢字はすでにイメージがついている。そのイメージをそのまま出すのはプロではない。イメージがついていないひらがなで読んで、ストーリーを掴んで自分の感覚をイメージして演じなければプロではない。と言っています。

 

これも深い言葉だと思いませんか?