心にフックをかける2つの方法

 

今日は「商品と心のフック」について話したいと思います。

お客様に心のフックがかかった状態とは、そのなんらかの要因が印象に残ってその商品が気になって忘れられなくなる事をさします。一方心にフックがかからないという事は、商品自体は全く自然に心に入ってくるのですが、特別な印象が薄くてすぐ忘れられてしまう事です。長い時間かけて創りだした商品でも心のフックがかからなければ市場での成功は望めません。

 

これは女性心理に似てませんか?

例えば男女間の現象でいえば、いい人だけど印象が薄くて大勢の中の一人の友人はフックがかからない人。何か他の人が持っていない「不思議な危うさ」に引きつけられて恋人になってしまったケースが多く見受けられます。これはフックがかかっているからです。

 

 

最初の心にフックをかける要素は「タブーを破る」事です。

商品を企画する際にやってはいけない「タブー」が商品企画を進める上で取り巻いていると思います。一度それを全て書き出してみてはいかがでしょうか?

 

例えばこんなタブーがありました。

「宝飾業界では18金以上でないと商品価値がなく市場性がないので開発しても無駄である」ところが他の業種から来た人がこのタブー視されている価値感を不思議に思い自分の足で歩いて調査しました。

 

調査結果は、海外は新企画はもとより古いアンティック商品も見てみると10Kの商品がたくさん実在するので古くからその需要がある。またオーストラリアでは「金無垢時計」とは18金ではなく10金が殆どで流通している。ところが日本では18金以上の商品でなければ商品にならないという「業界のタブー」があったのです。業界外から来た方がこの「業界のタブーの間違い」に気がつきました。

10金でも必ず売れるはずだ、日本だけが市場がないとは思えない。タブーを破ってしまえ」そしてその商品は製品化され市場を席巻して大ヒットしたのです。半年後には他社も参入して「10金」の市場が出来てしまいました。

 

業界自体が「固定観念や常識の枠」にとらわれて「間違った価値」をタブーとして守っていたのです。なんてもったいない事でしょうか?

このケースは新しい技術が必要なINNOVATIONでも何でもありません。

タブーに疑問を持つ「好奇心」と市場をみる「観察力」と製品化する「勇気」がポイントです。

 

我々は「渡される情報」をそのまま信じやすい傾向にあります。しかし真実は違う場合が多いのです。ガリレオガリレイが「天動説」を発表して世の中が認めたのは200年後です。

 

「ファンタフルフルシェイカーズ」は振ってはいけない炭酸飲料を、振らなければいけない炭酸飲料にかえて大ヒットしました。

タブーをきれいに破って新しい飲み方INNOVATIONをおこしたのです。

「それをやってはその商品ではなくなる」というようなタブーを破るのです。

 

 

心にフックをかけるもう一つのの方法は「予定調和」を壊してしまう事です。商品コンセプトを作り上げてロジカルシンキングで企画を進行すると必ず「予定調和」した商品環境を作ってしまいます。ここでいう商品環境とはパッケージデザイン、価格、宣伝広告、販路、市場から見える商品の環境のすべてをさします。

 

そう、全て予定通りの調和を求めて社内的にはそれが「正しい」の組み合わせとなるのです。これでは「個性」や「味」や「意外性」が全くなくなって、間違った印象は持たないのだけど心にフックが掛からないのです。

 

「予定調和」を壊すという考えは秋元康氏からTVでお聞きした事です。

彼のAKB48はまさに「予定破壊」のアイドルです。本来アイドルは手を伸ばしても届く事がない高嶺の花だからこそその商品価値があったのです。ところが彼は「手が届かない」を「手が届いて自分たちで作る」アイドルを創造してしまったのです。アイドルはこうではいけないという概念の根本的な「予定調和破壊」です。

 

また、予定調和を壊した物として「おはようガッチャマン」があります。これはゆる笑いのブームという内容で一度お話ししましたが、悪の組織のリーダーのベルクカッチェが最高に印象に残ります。彼は本来シリアスな悪のリーダーですが、おはようガッチャマンの中では、部下に遊ばれるお人よしのお姉系のキャラで演出されています。この感覚のズレが「予定破壊」をおこして心にフックをかける要因となっています。ガッチャマンに出演するキャラは全て「予定破壊」を起こした演出になっているのですが、このベルクカッチェの「イメージ破壊」の規模が最も大きい為に、一番の人気はベルクカッチェになっています。そうでなければいけないという「予定調和」を壊す事。そこに大きなフックがかかる要因が生まれて来ます。

 

あなたの商品を構成する要素を組み立てる際に「予定破壊」をどこかに入れる事は出来ませんか?商品の作り方として「いい人」から「危ない人」になる要素はどこかにありませんか?

 

心にフックをかける二つの方法を話しました。

「予定調和を壊す」「タブーを破る」事は組織の中では実現は非常に難しいと思います。いくつもの稟議書が必要でしょうし部署間での調整もままならないでしょう。しかしここで勇気を持ってすすまなければヒット商品は生まれません。

この超成熟化市場で生き残るにはこのステップは必ず必要な事です。

 

私もかつて新規事業をおこしたときに各支店の機能を否定して「本部一括」組織を作り上げたときがあります。社内での風当たりが強く苦い経験をした思いがあります。しかし今は私が提案した通りの組織になっています。

 

何かをやり遂げるには「勇気」と「知恵」と「情熱」が不可欠です。

 

まずは「常識」や「固定概念」の枠を外して商品や市場を客観的に観察し洞察する事から始める事をお勧めします。

 

 

当たり前の事や、誰もが考えるような発想からは

何も新しい物は生まれない。

予定調和をどう突き崩して行くか?

それが勝てる企画の発想法なのである。

秋元 康

 

 

 

アイデアの良い人は世の中にたくさんいるが、

よいと思ったアイデアを実行する人は少ない

盛田 昭夫